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手足口病が軽い子と重い子の違いは何か
同じ保育園のクラスで手足口病が流行した時、ある子はほとんど症状が出ずにピンピンしているのに、別の子は高熱と全身の痛々しい発疹でぐったりしてしまう。同じウイルスに感染したはずなのに、なぜこれほどまでに症状の現れ方に大きな差が出るのでしょうか。この症状が「軽い子」と「重い子」を分ける要因は一つではなく、いくつかの要素が複雑に絡み合って決まると考えられています。まず最も大きな要因の一つが感染した「ウイルスの種類」です。手足口病の原因となるエンテロウイルス属にはコクサッキーウイルスA群、B群、エンテロウイルス71型など非常に多くの種類が存在します。そしてウイルスのタイプによってその病原性や引き起こす症状の傾向がそれぞれ異なるのです。例えばエンテロウイルス71型は中枢神経系の合併症を引き起こしやすく、重症化するリスクが高いことで知られています。一方他のタイプのウイルスでは比較的軽い症状で済むことが多いといった具合です。次に「本人の免疫状態」も症状の軽重を大きく左右します。手足口病は一度かかっても別のタイプのウイルスには再び感染する可能性があります。もし過去に似たようなタイプのウイルスに感染した経験があれば、体の中にある程度の免疫が働いて次に感染した時の症状が軽く抑えられることがあります。初めて感染する完全に未知のウイルスに対しては体はより強い免疫反応を示し症状も重くなる傾向があります。またその時の「体調」も無視できません。睡眠不足や他の病気にかかっていた後などで体力が落ち免疫力が低下している時に感染すると、ウイルスが増殖しやすくなり症状が重くなる可能性があります。さらにアトピー性皮膚炎など、もともと皮膚のバリア機能が弱い子どもの場合は発疹がより広範囲にそしてひどく出る傾向があるとも言われています。このように症状の軽重はウイルスの個性とそれを受け止める子どもの体の状態との相互作用によって決まるのです。