「境界型糖尿病」という言葉を聞いたことがありますか?これは、血糖値が正常な範囲よりは高いものの、糖尿病と診断されるほどには高くない、いわば糖尿病の「予備群」とも言える状態を指します。具体的には、空腹時血糖値が110mg/dL以上126mg/dL未満、または75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)で2時間値が140mg/dL以上200mg/dL未満の場合に診断されます。この状態は、まだ糖尿病そのものではないため、すぐに薬物治療が必要になるわけではありません。しかし、決して安心できる状態ではなく、放置しておくと本格的な糖尿病へと進行するリスクが高いことが知られています。また、境界型糖尿病の段階であっても、動脈硬化が進行しやすく、心筋梗塞や脳卒中といった重大な血管合併症のリスクが上昇し始めることも指摘されています。つまり、境界型糖尿病と診断されたということは、生活習慣を見直し、糖尿病への進行を防ぐための重要な警告サインと捉えるべきなのです。この段階で適切な対策を講じれば、血糖値を正常範囲に戻したり、糖尿病への進行を遅らせたりすることが十分に可能です。そのためには、まず自分が境界型糖尿病であるという状態を正しく理解し、そのリスクを認識することが何よりも大切です。そして、医師や管理栄養士などの専門家のアドバイスを受けながら、食事療法や運動療法といった生活習慣の改善に積極的に取り組むことが求められます。境界型糖尿病は、自覚症状がほとんどないため、健康診断などで偶然指摘されて初めて気づくケースが少なくありません。だからこそ、診断された際には、それを生活改善の好機と捉え、将来の健康を守るための行動を開始することが重要になるのです。