風邪をひいた後、なぜ肺炎にまで進行してしまうことがあるのでしょうか。そのメカニズムを理解することは、肺炎の予防にも繋がります。風邪の多くは、ライノウイルスやコロナウイルス(一般的な風邪の原因となるもの)といったウイルスが鼻や喉などの上気道に感染することで起こります。このウイルス感染によって、気道の粘膜は炎症を起こし、ダメージを受けます。気道粘膜には、外部からの異物や病原体の侵入を防ぐバリア機能や、線毛運動によって異物を体外へ排出しようとする自浄作用がありますが、ウイルス感染によってこれらの機能が低下してしまうのです。バリア機能や自浄作用が弱まると、普段であれば排除できるはずの細菌(肺炎球菌やインフルエンザ菌など)が気道内に侵入しやすくなり、さらに肺の奥深くにある肺胞にまで到達して増殖し、炎症を引き起こします。これが、風邪から移行する細菌性肺炎の主なメカニズムです。特に、体力が低下している時や、免疫力が弱まっている時(高齢者、乳幼児、基礎疾患を持つ人、過労やストレスが溜まっている人など)は、この二次的な細菌感染が起こりやすくなります。では、風邪から肺炎への移行を防ぐためにはどうすれば良いのでしょうか。まず最も基本的なことは、風邪をひかないようにすることです。手洗いやうがいを徹底し、人混みを避け、十分な睡眠とバランスの取れた食事で免疫力を高めておくことが重要です。もし風邪をひいてしまったら、悪化させないように早めの対処を心がけましょう。安静にして体を休め、十分な水分と栄養を摂ることが大切です。症状が辛い場合は、無理せずに医療機関を受診しましょう。また、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンの接種も、肺炎の予防に有効です。特に高齢者や基礎疾患を持つ方は、これらのワクチンの積極的な接種が推奨されています。喫煙は気道のバリア機能を低下させ、肺炎のリスクを高めるため、禁煙することも重要な予防策の一つです。