喉の痛みや発熱といった症状が現れると、多くの方がまず扁桃炎を疑うかもしれません。しかし、これらの症状は扁桃炎以外の病気でも見られることがあり、自己判断は禁物です。正確な診断のためには、医療機関を受診し、医師の診察を受けることが不可欠です。例えば、同じように喉の痛みを引き起こす疾患として、咽頭炎があります。咽頭炎は、扁桃だけでなく喉全体の粘膜に炎症が広がるもので、ウイルス感染によるものが多く見られます。また、喉頭炎は声帯やその周辺の炎症で、声がれや咳が主な症状となります。これらの疾患は、症状が似ている部分もありますが、炎症の部位や治療法が異なる場合があります。さらに注意が必要なのは、伝染性単核球症です。これはEBウイルスというウイルスによって引き起こされる感染症で、扁桃炎と非常によく似た症状(発熱、喉の痛み、扁桃の腫れ、白い膿の付着)に加え、首のリンパ節の著しい腫れや肝機能障害などを伴うことがあります。若い人に多く見られ、抗菌薬が無効であるため、正確な診断が重要です。また、稀ではありますが、喉頭蓋炎という緊急性の高い病気もあります。喉頭蓋は気管の入り口にある蓋のような組織で、ここに急性の炎症が起こると気道が塞がれて呼吸困難に陥る危険性があります。急激な喉の痛み、嚥下困難、呼吸困難、よだれが出る、くぐもった声といった症状が見られたら、直ちに救急受診が必要です。このほかにも、亜急性甲状腺炎や、非常に稀ですが悪性リンパ腫などの血液疾患、喉頭がんなどが初期症状として喉の違和感や痛みを呈することもあります。これらの疾患を見逃さないためにも、症状が長引く場合や、一般的な扁桃炎とは異なる症状がある場合には、必ず耳鼻咽喉科などの専門医を受診し、適切な検査と診断を受けるようにしましょう。医師は、問診や視診、必要に応じて血液検査や画像検査などを行い、総合的に判断してくれます。