境界型糖尿病と診断されても、まだ糖尿病ではないから大丈夫、と軽く考えてしまう人もいるかもしれません。しかし、境界型糖尿病を放置することには、様々な健康上のリスクが伴います。決して楽観視できない理由を理解しておくことが重要です。まず最も大きなリスクは、本格的な糖尿病へと進行する可能性が高いことです。境界型糖尿病の人が何も対策をせずに生活を続けると、年間で約5~10%の人が糖尿病に移行すると言われています。糖尿病になってしまうと、食事療法や運動療法に加えて、薬物療法が必要になるケースが多く、生涯にわたる自己管理が求められます。さらに、糖尿病は網膜症、腎症、神経障害といった三大合併症をはじめ、様々な合併症を引き起こし、生活の質を著しく低下させる可能性があります。次に、境界型糖尿病の段階から動脈硬化が進行し始めているという点も重要なリスクです。血糖値が正常より高い状態が続くと、血管の内壁が傷つきやすくなり、そこにコレステロールなどが付着して血管が硬く、狭くなっていきます。これが動脈硬化です。動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や狭心症といった心臓病、脳梗塞や脳出血といった脳卒中など、命に関わる重大な病気を引き起こすリスクが高まります。境界型糖尿病の人は、血糖値が正常な人に比べて、これらの血管合併症を発症するリスクが高いことが分かっています。また、境界型糖尿病は、高血圧や脂質異常症(高コレステロール血症や高中性脂肪血症など)といった他の生活習慣病を合併しやすいことも知られています。これらの疾患が複数重なると、動脈硬化はさらに加速し、血管合併症のリスクはますます高まります。このように、境界型糖尿病は、糖尿病への入り口であると同時に、すでに様々な健康リスクを抱えている状態なのです。だからこそ、放置せずに早期から適切な対策を講じ、糖尿病への進行を防ぎ、合併症のリスクを低減させることが極めて重要になります。