RSウイルス感染症は、多くの場合、数日から一週間程度で回復に向かいますが、特に乳幼児や基礎疾患を持つ人にとっては、治りかけの時期であっても様々な合併症を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。最も頻度の高い合併症の一つが中耳炎です。RSウイルス感染によって鼻や喉の粘膜に炎症が起こると、鼻と耳を繋ぐ耳管を通じてウイルスや細菌が中耳に入り込みやすくなり、中耳炎を発症します。特に乳幼児は耳管が短く太いため、中耳炎になりやすい傾向があります。耳をしきりに気にする、機嫌が悪い、発熱が続く、耳だれがあるといった症状が見られたら、中耳炎を疑い、耳鼻咽喉科を受診しましょう。次に注意すべきは、細気管支炎や肺炎といった下気道感染症です。RSウイルスは、細気管支という肺の奥深くにある細い気管支に炎症を起こしやすく、これが細気管支炎です。ゼーゼー、ヒューヒューといった喘鳴や、多呼吸、陥没呼吸(呼吸時に肋骨の間や鎖骨の上がへこむ)などが見られ、重症化すると呼吸困難に陥ることもあります。肺炎は、肺胞に炎症が及んだ状態で、高熱が続いたり、咳がひどくなったり、呼吸状態が悪化したりします。これらの症状が見られた場合は、速やかに医療機関を受診し、適切な治療を受ける必要があります。場合によっては入院が必要になることもあります。また、稀ではありますが、無呼吸発作や脳症といった重篤な合併症を引き起こすことも報告されています。特に、早産児や生まれつき心臓や肺に疾患のある赤ちゃん、免疫不全のある赤ちゃんは、重症化するリスクが高いため、より一層の注意が必要です。治りかけに見えても、咳がひどくなる、呼吸が苦しそう、顔色が悪い、ぐったりしている、水分が摂れないといった症状が現れたら、油断せずにすぐに医師の診察を受けてください。早期発見と早期治療が、合併症の重症化を防ぐために最も重要です。