インフルエンザを自然治癒で治そうとする際、私たちが最も警戒しなければならないのは、ウイルスが単なる風邪の枠を超えて体内の重要な臓器を侵食し始める合併症の発生です。自然治癒期間の1週間を無事に乗り切るためには、自分自身の体温の変化だけでなく、特定の危険信号を見逃さない冷静な観察眼が求められます。最も頻度の高い合併症は細菌性の肺炎です。インフルエンザウイルスによって気道粘膜が破壊されると、普段は悪さをしない常在菌が肺の奥深くに入り込みやすくなります。もし一度下がった熱が再び上がり始めた場合や、痰の色が黄色や緑色に濃くなった場合や、激しい咳と共に胸の痛みを感じる場合は肺炎の可能性が極めて高く、自力での自然治癒はもはや不可能です。次に注意したいのが中耳炎や副鼻腔炎です。特に鼻水が止まらない時期に強く鼻を噛みすぎると、ウイルスや細菌が耳や鼻の奥に押し込まれ、激しい痛みや膿の蓄積を招きます。耳の下が腫れたり、顔の半分に違和感を感じたりした場合は、早めに耳鼻科医の診察を受けるべきです。また非常に稀ではありますが、ウイルスが心臓の筋肉に炎症を起こす心筋炎も自然治癒期間中に発生する恐れがあります。階段を少し上るだけで異常な息切れがしたり、動悸が止まらなかったり、足に強いむくみが出たりした場合は心臓からの救急信号です。さらに子供において最も恐ろしい合併症は、先述の通りインフルエンザ脳症です。熱が出てから2日以内に起きることが多く、自分の名前が言えない、家族の顔が分からない、空中に何かが見えるといった異常な言動は、脳がダメージを受けている証拠であり、1分1秒を争う救急要請の対象となります。これらの合併症は、たとえ当初は軽症であっても、体調の急変と共に突如として現れる性質を持っています。自然治癒とは、医療を拒否することではなく、医療を必要とする瞬間を的確に見極めるための慎重な待機期間であるべきです。そのためには、同居している家族がいる場合はお互いにチェックし合い、1人の場合は定時に体温と脈拍を記録するなどのセルフモニタリングを徹底してください。1週間の期間中、特に3日目と4日目の体調の変化を注視し、もしも回復の軌道から外れていると感じたら、迷わずプロの診断を仰ぐ勇気を持ってください。健康とは、時に自分の限界を認め、現代医学の力を借りることによって守られるものです。自然治癒という目標を完遂するためにも、最悪のシナリオを常に想定内に置く賢明さが、あなたとあなたの大切な人の命を救う最強の防壁となるのです。