乳腺炎の初期症状、特にうっ滞性乳腺炎の段階であれば、適切なセルフケアを行うことで症状が改善する場合があります。しかし、セルフケアには限界があり、誤った対処はかえって症状を悪化させる可能性もあるため注意が必要です。まず、初期のうっ滞性乳腺炎で試せるセルフケアとしては、赤ちゃんに頻回に授乳することが最も重要です。しこりがある部分から母乳が効率よく排出されるように、赤ちゃんの体勢を工夫したり、しこりの部分を優しく支えながら授乳したりします。授乳前にしこりの部分を軽く温めると、母乳の流れが良くなることがありますが、炎症が強い場合は温めすぎると痛みが悪化することもあるため、自分の感覚で調整しましょう。逆に、授乳後や痛みが強い時には、冷たいタオルや冷却ジェルなどで乳房を冷やすと、炎症や痛みが和らぐことがあります。ただし、冷やしすぎは血行を悪くする可能性もあるため、適度に行いましょう。水分を十分に摂取することも大切です。しかし、自己流の強い乳房マッサージは絶対に避けるべきです。乳腺組織は非常にデリケートであり、無理な力を加えると乳腺を傷つけたり、炎症を悪化させたりする危険性があります。マッサージを行う場合は、必ず助産師などの専門家から正しい方法を指導してもらいましょう。また、市販の解熱鎮痛剤を使用することも一時的な症状緩和には役立ちますが、これは根本的な治療ではありません。セルフケアで症状が改善しない場合、例えば二十四時間以上しこりや痛みが続く、熱が下がらない、乳房の赤みや腫れが悪化するといった場合は、セルフケアの限界と考え、速やかに医療機関(産婦人科や乳腺外科)を受診する必要があります。高熱や悪寒、全身倦怠感などの全身症状が現れた場合は、化膿性乳腺炎に進行している可能性が高いため、直ちに受診してください。乳腺炎の治療は、専門家の診断と指導のもとで行うのが最も安全で確実です。自己判断で無理をせず、早めに相談することが大切です。