境界型糖尿病は、糖尿病の一歩手前の状態であり、血糖値が正常よりも高いものの、まだ糖尿病と診断されるほどではない段階を指します。この境界型糖尿病の段階では、実は自覚症状がほとんどないことが一般的です。そのため、健康診断や人間ドックなどで血糖値の異常を指摘されて初めて気づくというケースが非常に多く、サイレントディジーズ(静かなる病気)とも呼ばれることがあります。自覚症状がないからといって、体の中で何も起きていないわけではありません。血糖値が高い状態が続くと、血管には少しずつ負担がかかり始め、動脈硬化が静かに進行していく可能性があります。また、インスリンの分泌量が減っていたり、インスリンの効きが悪くなっていたり(インスリン抵抗性)といった、糖尿病へと繋がる変化はすでに始まっているのです。まれに、境界型糖尿病の段階でも、非常に軽微な症状を感じる人がいるかもしれません。例えば、以前よりも少し喉が渇きやすくなった、尿の回数が若干増えた、何となく体がだるい、疲れやすいといったものです。しかし、これらの症状は非常に曖昧で、他の原因(例えば、季節の変化や疲労など)によるものと区別がつきにくいため、本人が境界型糖尿病の症状として認識することは難しいでしょう。自覚症状が乏しいからこそ、境界型糖尿病は発見が遅れがちになり、気づいた時にはすでに本格的な糖尿病に進行していたり、動脈硬化が進んでしまっていたりする危険性があります。したがって、定期的な健康診断を受け、血糖値やHbA1cといった検査項目をチェックすることが非常に重要になります。特に、肥満、運動不足、不規則な食生活、家族に糖尿病の人がいる、高血圧や脂質異常症を指摘されているといったリスク因子を持つ人は、積極的に検査を受け、自身の血糖状態を把握しておく必要があります。もし境界型糖尿病と診断されたら、自覚症状がなくても、それは体からの重要なサインと受け止め、早期からの生活習慣改善に取り組むことが、将来の健康を守るために不可欠です。