医療現場で多くのリンパ浮腫患者さんを診察している医師の立場から、いつ、そして何科を受診すべきかについての重要なアドバイスをさせていただきます。リンパ浮腫は進行性の疾患でありながら、初期段階では見た目の変化が乏しいため、受診が遅れがちなのが現状です。私たちが理想とする受診時期は、本人が違和感を覚えたその瞬間です。例えば、服の袖が通りにくい、指輪がきつくなった、足の甲がむくんで血管が見えにくくなった、といった些細な変化がリンパ浮腫の初期サインです。こうした症状がある場合、まずは手術を受けた診療科を受診し、そこから形成外科のリンパ浮腫外来へ紹介してもらうのが医学的なスタンダードなルートです。残念ながら、まだ一部の医療従事者の間でもリンパ浮腫は治らないから仕方がないという認識が根強く残っていますが、現代の医学では早期介入によって症状を最小限に抑えることが可能です。診察室で私たちが最初に行うのは、浮腫の原因を特定することです。がんの術後であれば再発による圧迫がないかを確認し、その上でリンパ管の機能を調べます。最近ではLVAと呼ばれるリンパ管細静脈吻合術という微小外科手術も普及しており、これによってリンパ液のバイパスを作ることで症状の改善が期待できますが、この手術が適応となるのはリンパ管がまだ生きている比較的早い段階に限られます。ですから、何科に行けばいいか迷って数年単位で放置してしまうことは、治療の選択肢を自ら狭めてしまうことに他なりません。また、リンパ浮腫外来では多職種連携を重視しています。医師の診断に基づき、専門のセラピストが1人ひとりの生活環境に合わせた圧迫療法を提案します。仕事でストッキングが履けない、夏の暑さでスリーブが辛いといった悩みも、専門外来であれば具体的な代替案を一緒に考えることができます。また、蜂窩織炎という急激な炎症を繰り返すと、リンパ浮腫は一気に悪化します。もし腫れている場所が急に赤くなり高熱が出た場合は、救急科や内科を受診して抗生剤治療を受ける必要がありますが、その後は必ずリンパ浮腫外来でベースの浮腫管理を見直さなければなりません。リンパ浮腫は完治を急ぐ病気ではなく、正しく管理して共生していく病気です。手足の違和感に気づいたら、それが自分からのレスキューサインだと捉え、迷わず専門外来の門を叩いてください。