あれは気温が急激に下がった11月の深夜、午前2時を過ぎた頃のことでした。寝室の冷え込みと共に、胸の奥から「ヒューヒュー」という細い笛のような音が聞こえ始め、次第に息を吸い込むことが難しくなっていくのを感じました。私は子供の頃から小児喘息を持っていましたが、大人になってからは落ち着いていたため、その突然の再発に激しいパニックに襲われました。まず真っ暗な部屋の中でなんとか上体を起こし、ベッドの縁に腰をかけました。横になっていると胸が潰されるような圧迫感がありましたが、座ることで少しだけ空気が入ってくる感覚が得られました。手元に吸入薬がないことに気づき、重い体を引きずってリビングの救急箱まで這うようにして移動しました。あの数メートルの距離が、まるで数キロメートルもあるかのように感じられるほど、一歩一歩が酸素不足で過酷なものでした。ようやく見つけたレスキュー用の吸入器を手に取ったとき、手が震えてうまくセットできませんでしたが、壁に寄りかかりながら深呼吸を試み、1回、2回と吸入を行いました。薬が気道に広がるまでの数分間は、まさに自分との戦いでした。私は目を閉じて、以前医師から教わった「口すぼめ呼吸」を繰り返しました。鼻から吸って、ろうそくの火を消すように細く長く吐き出す。これを繰り返すうちに、少しずつ肺の締め付けが解けていくのが分かりました。30分後にはようやく普通に会話ができる程度まで回復しましたが、あのまま誰にも気づかれずに意識を失っていたらと思うと、今でも背筋が凍る思いです。この体験から私が学んだ最大の教訓は、喘息発作への備えは平時から完璧にしておかなければならないということです。それ以来、私は寝室の枕元に必ず吸入薬と常温の水を置き、さらにスマートフォンの緊急連絡先には夜間診療所の番号を登録しています。また、寝室の温度を一定に保つためにオイルヒーターを導入し、乾燥を防ぐための加湿も徹底しています。喘息は自分一人で対処しようとせず、家族にも発作時の動線を共有しておくことが大切だと痛感しました。あの夜、私は自力で乗り切ることができましたが、それは運が良かっただけに過ぎません。発作が起きたら迷わず専門医の診察を受けること、そして何より発作を起こさないための毎日の吸入ステロイド薬を怠らないことの重要性を、身をもって知った出来事でした。